言いたいこと

言いたいことに向かう文章

 これまでのところで、作文に取り組む上での基本的な考え方と最低限の決まりについて学びました。
 この章では、「言いたいことに向かっていく文章」で説明した、「言いたいことを言うために、その文章を構成する全ての材料が必要な要素となって必要な場所に置かれている文章」とはどのようなものであるのかということを、実際の例文で見てみることにしましょう。
 この章で説明することは、簡単なことを言っているようでいて案外難しい、しかし、文章を作成する上では要(かなめ)になることですから、ただ読み流して理解したつもりになるだけではなく、しっかり時間をかけて実際に自分で作業をしてみてください。(ディスプレイで見るよりも、このページをプリントアウトしてじっくり考えることをお勧めします。)

この演習の意義

 普通作文を書く場合、与えられた題について、自分が書けそうなことを色々と思い浮かべて、その中から、思い浮かべた物同士の関連性や意味のつながりを考え、文章の主題(何について書くか)を決め、その主題を述べるのに必要十分な素材だけを選び、配列を整えて、それ以外の様々な思いつきは、捨てるのが惜しくても、全部捨ててしまうということを行います。
 つまり文章を書くときの困難さは、素材の収集から始まって、素材選び・捨て、素材の並べ方まで様々なところで存在します。特に「何を書けばよいかわからない」というように、素材の収集の困難さは、結構致命的です。
 この教材では、元々教科書の模範例文にしようと意図されたものを添削材料としているので、この素材収集と選択の作業を省いて、素材の論理構成だけに意識を集中させながら、言いたいことに向かって素材を構成していく推敲の作業だけに専念することができます。
 この事によって、さほど書くべき素材を持っていない作文初心者でも、推敲とはどうするものなのかということをリアルに体感することができるはずです。

 それでは早速問題に取り掛かることにしましょう。

「例文1」「例文2」を読み比べて、問題に答えてみよう

【例文1】

 街頭インタビューで、高齢者に「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼びかけるインタビュアーを見かける。そのうえ、「おいくつですか。」「お元気ですね。」などと言っている。高齢者に聞くと、多くの人は自分が老人だとは意識していないという。高齢者に対して、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼びかけるべきではない。電車の中で席を譲られて機嫌をそこねる高齢者もいる。自分の祖父母でもない人に、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼びかけるのは、デパートで働いている店員や交通機関で働いている人たちに、「おねえちゃん」「おにいちゃん」と呼びかけるのと同じく失礼である。友人が勤めている病院では、医師や看護師が高齢の患者を「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばず、その人の名前で呼んでいるという。自分の孫でもない他人、それも一人前の大人から、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼びかけられたときには、「自分も、そんな年に見えるのか。」とショックを受けるだろう。相手の個性を消し去って、見かけの年齢だけで一まとめにする呼びかけはやめるべきだ。

 
【例文2】
 街頭インタビューで、高齢者に「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼びかけるインタビュアーを見かける。そのうえ、「おいくつですか。」「お元気ですね。」などと言っている。(第一段落)
 高齢者に対して、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼びかけるべきではない。自分の祖父母でもない人に、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼びかけるのは、デパートで働いている店員や交通機関で働いている人たちに、「おねえちゃん」「おにいちゃん」と呼びかけるのと同じく失礼である。(第二段落)
 高齢者に聞くと、多くの人は自分が老人だとは意識していないという。電車の中で席を譲られて機嫌をそこねる高齢者もいる。自分の孫でもない他人、それも一人前の大人から、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼びかけられたときには、「自分も、そんな年に見えるのか。」とショックを受けるだろう。(第三段落)
 友人が勤めている病院では、医師や看護師が高齢の患者を「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばず、その人の名前で呼んでいるという。相手の個性を消し去って、見かけの年齢だけで一まとめにする呼びかけはやめるべきだ。(第四段落)

 (※なおこの例文1,2は、京都書房『国語表現Ⅱ』(国語Ⅱ007 平成15年文部科学省検定済み)の教科書P20から引用しています。リンクからPDF表示。)

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【問題】

  1. この二つの文章はどちらが読みやすいですか。
  2. この二つの文章を読んで、文章の完成度についてそれぞれどのくらいなのかについて考えてみましょう。

文章としての完成度はそれほど上がっているわけではない

 この教科書編纂者は例文2を例文1を添削した模範例として提示しようとしているので、もちろん例文2の方が元の例文1の文章よりも若干読みやすくなってはいるはずです。
 しかし、例文2でも、言わんとする内容を消化しきれずに整理できていないところがそのままなので、例文2の方が例文1よりも文章としての完成度が高いとは、必ずしも言えません。
 この章では、「言わんとする内容を消化しきれずに整理できていないところ」とはどういうところなのか、そのことを考えながら、「言いたいことの整理」をして推敲するとはどういうことかなのかを考えてみたいと思います。 

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