添削における対話

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添削における対話

 夏に送られてきたベネッセの『小論文通信 Vol.4』が、業者発行のものにしては、ずいぶんとまともなことが書いてあるので、参考に載せておきます。(画像をクリックするとPDFファイルを開くことができます)

対話で核となる「意見」を中心に確認

  • 生徒が本来書きたかったことは、どのように表現すれば読み手に伝わるのかを、対話の中で示す。
  • 細かな表記の修正よりも核となる「意見」を中心に確認。

 これまで業者のこの手のパンフレットでは見たこともないような、ずいぶんとまっとうなことが書いてあります。
 しかし、気になる点がないわけでもありません。
 「先生は、疑問と思うところにツッコミを入れる」を不用意にやると、恐らくうまくはいきません。先生が「疑問と思うところにツッコミを入れる」のは、「生徒の意図を聞き出」すためであって、添削を促すためではいけません。
 生徒の意図を確認出来たら、生徒の文章の矛盾しているところや、思考の足りていないところを指摘して、改稿をさせます。これは、「疑問と思うところにツッコミを入れる」と似てはいますが、それとは本質的に異なります。
 この時、指導者には解答の方向性が多少なりとも見えていなければなりません。しかしまだこの段階では、「解答の方向性」を示してしまっては、生徒が自分の頭を使って書くことを阻害してしまうので、「底の浅い発想をして矛盾している部分があるから、それをもう一段深い思考をさせて、矛盾が出ないように論を組み立てさせる」ために、ツッコミを入れるのです。
 ところがこの時、生徒が往々にしてやるのは、指摘された問題個所を、全部消してしまおうとすることです。生徒の発想からしたら、「問題点があるなら、なくしてしまえばいいだろう」ということですが、それではいけません。指摘された箇所は、文章の核になりそうな、文章で一番書くに値する部分です。それを消してしまうわけですから、そうやってできた文章は、なんともとらえ所がないのっぺらぼうのようなものになってしまいます。
 ですから、そのあたりも説明しながら、「自分の頭を使って深い思考に至る」努力をさせなければなりません。ただでさえ、生徒が考えることは大変なのに、ただ、目指す方向も決めずに「疑問と思うところにツッコミを入れる」のでは、ますます生徒が混乱に陥るだけです。

相互評価は思考進化の道具としては役に立たない

 相互評価は、思考進化の道具としては、さほど役には立ちません。「思考が浅い段階にとどまっていること」や、「思考の筋道が上手く説明できていないこと」を深く追求していくような姿勢を持った生徒を、その前段階で育てることが、ほとんどの場合出来ていないからです。
 ですからこのようなことをやると、往々にして、深く考えなくてもすぐに気づくような表面的な良さをそれぞれが発表して、すぐに終わってしまいます。
 相互評価は、他の生徒の作品を読ませることで、親近感を持って、「自分も同じ流れに乗って頑張ろう」と思わせるのには有効なツールなので、ある程度、生徒の作品の完成度が上がったあたりでやると効果があります。
 「評価に時間がかかってしまいます。 何かよい方法はないでしょうか?」というような、安直な発想からこれをやるのは、単なる時間稼ぎにすぎません。

安直な指導法を求めすぎるのはどうも

 この『小論文通信』は、「本質的な指導法」と、「手軽に添削の指導法を手に入れたいという教師のニーズ」と、「自社製品をしっかり売りたい業者の思惑」とがないまぜになって出来上がったパンフレットです。業者発行のものにしては珍しく「本質的な指導法」にかなりスポットが当たっているのでここで取り上げました。
 「手軽に添削の指導法を手に入れたい」という教師のニーズは、同じ教師として分からないではありませんが、そんなものはありません。
 自分で頭を使わずに手に入れられる技術は、この稿でしつこく説明しようとしている作文の技術と同じで、本質を理解せずに、型だけを誤って振り回すことになりかねません。自戒しましょう。

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