文章観

確かな文章観を持とう
文章の最大の価値は、「伝えるべき意味内容を伝える」ということです。ただ、気が利いただけの、何も伝えたいことのない文章に存在意義はありません。 このことは、「文章を書く」「文章の指導をする」時に一番大切になることですので、最初にしっかりと確認をしておきましょう。 ここをはき違えてしまうと、内容がない文章を書いて、素晴らしい文章が書けたつもりになるという、独り相撲の道化を演じることになってしまいます。
次の例文は、読売新聞の社説『編集手帳』(2018/8/20)です。あなたが採点官になったとして、この文章に果たして何点付けますか。 採点基準は、以下の通りです。
問題をやってみよう 次の文章に何点を付けるか
採点基準
- ・60点以下
- 「きちんとした文章を書こう」という意欲が感じられない。極端に字数が少ない場合も多い。
- ・60点
- 一応字数は埋まって文章の形になってはいるが、言いたいことがない。内容がばらばらなど。
- ・65点
- 一応言おうとしていることはあるが、それを言うために部品がすべて生かされている構成になっていない。
思考整理が十分ではなく、論理のつながりが不十分。
時間順・考えた順番の文章は、いくらしっかり書いてもここ止まり。
「確かに」で認めたことを「しかし」以降できちんと踏まえて反論していな い。( 樋口裕一氏の本の例文の内少なくとも三分の二以上はこれ) - ・70点
- 一応の合格点。言いたいことがあって、それを言うためにすべての部品が適切に構成された文章になっている。 内容は、誰でも割合簡単に思いつきそうなことで、あまり深さはない。
これで減点要素があると不合格ライン。 - ・75点
- 内容の上で、あまり奥深くはないまでも、何らかの点で自分独自の思考が展開されている。
- ・80点
- 内容上、深まりがあったり、独自の思考が展開されていたりする。
あまり文章が得意でない普通の生徒でも、頑張って精進すれば、このレベルまでには到達できる。到達してほしいライン。 - ・85点
- 80点の文章よりもさらに内容が奥深く、表現も優れている。私は滅多にこの点をつけることはない。
『編集手帳』(2018/8/20)
①5月に優秀作が決まったばかりの「サラリーマン川柳」にいたく共感する一句があった。<減る記憶それでも増えるパスワード>②パソコンやスマートフォンのアプリといえば、何かの設定をしてもパスワードをたちまち忘れて使えなくなってしまう身にも、記事を読んでもうひとごとではいけないかなと思えた。世界保健機関(WHO)がオンラインゲームなどに没頭し、健康や生活に深刻な支障が出た状態を「病気」に分類したという③ゲーム障害、あるいはゲーム依存症と呼ばれる。眠りが妨げられたり、食事が不規則になったりしても、自己規制のできない状態をいう④専門家によれば、中高生のインターネット依存は国内に52万人と推計され、大半がゲーム依存と考えられている。しかりつける側の親御さんにはニュースの使い所だろう。聞く耳をもってくれるかもしれない。世界中で治療が始まるとなれば、怖さが膨らむ⑤後悔先に立たず。いくら楽しかろうと、心身を害してしまってはもともこもない。スマホを軽快にタップするそこのきみ、「病気」へのパスワードになりかねないことを忘れずに。 (段落記号を◆を、段落番号に改めました。)
私の解説は次頁で