採点解説

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例題 採点・解説

『編集手帳』(2018/8/20)

①5月に優秀作が決まったばかりの「サラリーマン川柳」にいたく共感する一句があった。<減る記憶それでも増えるパスワード>②パソコンやスマートフォンのアプリといえば、何かの設定をしてもパスワードをたちまち忘れて使えなくなってしまう身にも、記事を読んでもうひとごとではいけないかなと思えた。世界保健機関(WHO)がオンラインゲームなどに没頭し、健康や生活に深刻な支障が出た状態を「病気」に分類したという③ゲーム障害、あるいはゲーム依存症と呼ばれる。眠りが妨げられたり、食事が不規則になったりしても、自己規制のできない状態をいう④専門家によれば、中高生のインターネット依存は国内に52万人と推計され、大半がゲーム依存と考えられている。しかりつける側の親御さんにはニュースの使い所だろう。聞く耳をもってくれるかもしれない。世界中で治療が始まるとなれば、怖さが膨らむ⑤後悔先に立たず。いくら楽しかろうと、心身を害してしまってはもともこもない。スマホを軽快にタップするそこのきみ、「病気」へのパスワードになりかねないことを忘れずに。 (段落記号を◆を、段落番号に改めました。)

 私の採点は、どう見積もっても60点です。つまり、「イイタイコト」に向かって、文章を構成する部品が有効に並べられてはいないということです。
 この文章で「イイタイコト」とはいったい何でしょうか。おそらく、この筆者には「『イイタイコト』など無い」というのが本当の所でしょう。でも、あえて言うなら、「オンラインゲームなどに没頭し、健康や生活に深刻な支障が出た状態は『病気』だから、注意しようね」ということぐらいでしょうか。
 しかし、もしそれを言うことが本当の目的であるなら、サラリーマン川柳の話は、全くの無駄です。「『病気』へのパスワード」という所で、無理やり話をつなげてみても、これがどれだけ「オンラインゲーム注意」を訴えることに有効でしょうか。
 このような文章を書いてしまった理由は、筆者がサラリーマン川柳を見た時に、「病気へのパスワードと締めくくれば、インターネット依存の注意とうまく結びつけて、気の利いた締めくくりを作れるぞ。」と考えてしまったことにあります。
 このような発想をする時、筆者には、「自分がこの文章で言おうとしていることは、果たして何だったのか。」というような発想は、おそらく一切無かったはずです。「気の利いた表現で締めくくる」、これが至上命題だから、こんなに全く有効に働かない部品を組み合わせて、「してやったり」とほくそ笑んでいられるのです。

文章の達人と考えられている人たちの文章だから困る

 これが、このコラムの筆者だけの問題に留まるまるなら、こんな文章は打ち捨てておけば済むことです。ところが、このような美文意識の文章や、内容を無視した型を平気で使う、文章の達人たちや指導者たちが実はとても多いのです。
 そのような人たちに指導されたり、このような文章をお手本として見せられたりする生徒が、まともな文章観を持てるはずがありません。そのことについて次頁で考えます。

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