練習にあたって
よい文章とは
文章というものは、日記の類を除いて、すべて他人に向けて何らかの情報を伝えるために書かれるものである。だから、自分の伝えたい情報を、対象とする読者にきちんと伝え、共感を得るような文章が「よい文章」ということになる。
君たちは文章を書く時、自分のことを他人が分かってくれると信じすぎるふしがある。親友同志の間ですら、よく分かってくれていると思っていても、本当はそうではなかったということが多いのである。まして君たちのことを知らない人が、どれほど君たちのことを分かってくれるだろうか。君たちとは違った環境に置かれている人たちにとっては、君たちの常識は、必ずしも常識ではないのである。
だから文章を書くにあたっては、まず、この「他人は自分のこと(意見)を分かってくれる」という無意識の甘えを取り除くことから始めよう。むしろ、「他人はなかなか自分のことを分かってくれないものだ」という前提に立って思考することが文章上達の近道である。
それでは「自分の伝わる文章」を書くにはどうしたらよいか。それは、伝えるべき「自分」をまずよく整理することである。次に、それをどうしたら相手に伝えることができるかを考えてみる。相手が君たちと同じ「常識」を持っているという思い込みを捨てれば、自然とできるだけ丁寧な説明をして、相手を説得しようとするようになるだろう。
そして反論が予想される場合には、反論に対する自分の見解をあらかじめ述べて、相手の意見では駄目なことを伝えておく。
そういう配慮をする中で完成した「自己の伝わる文章」を、いい文章というのである。
文章を書く時の心構え
相手が自分と同じ「常識」を持っているという思い込みを捨て、できるだけ丁寧な説明をして、相手を説得しようとする。
※日記について
本文では日記を例外のように述べた印象があるかもしれないが、それは私の本意ではない。
第一に、日記を読むであろう将来の自分は、今の自分のことを今のように分かっているわけではないこと(p42参照)、第二に、日記を書くことによって自分の考えを整理するためには、他人に対して書くのと同じ姿勢で文章を書く必要があること(p5参照)、この二点において、日記でも本文で述べたような書き方をすることが必要になってくるのである。