内容にかかわる工夫
内容にかかわる表現の工夫が大切
自分の言いたいことにスポットを当て、それ以外のものを極力省(はぶ)いていくことによって主題を明確にする(p16、p49参照)というような、内容にかかわる表現の工夫ではない、同じ内容をより読者に印象づけるための「表現の工夫」というものも、確かに存在する。そしてこれはかなり有効でもある。だから多くの国語の先生は、これを工夫してみなさいという。
だが、これを求めるのは後回しにした方がよいと私は考えている。本書を読んでいる君たちももう見当がついているように、前者の表現の工夫だけでもかなりな労力である。それは当然、文章に書く内容を探し出し、整理していくことが前提になっている。その上に君たちには、読者を印象づけるための表現の工夫をする時間が残されているだろうか。内容か、読者の印象付けかの選択ならば、私は迷わず内容を取る。理由は前項、〈自分を正確に伝えるための「表現の工夫」〉で述べたとおりだ。
だから私は、文章の内容を吟味(ぎんみ)する努力を君たちには優先してもらいたい。それでもまだ余裕(よゆう)があるのなら、読者を印象づける工夫はまことに結構なことである。文学青年・少女諸君は大いに才能を発揮してもらいたい(p72参照)。