読むべき内容がある文章

読むべき内容がある文章

 さてそれでは、前項の例2aを次のような文章(例2c)にした時、君たちは「なるほどおもしろい」と思うだろうか。おもしろいと思うためには何が必要だろうか。

例2a
 この情報化社会にみんなが対応できているのだろうか。
 確かにインターネットは便利だ。だが、それを使いこなせない人は多い。
 これからは、老人や子どもでもたやすく使えるインターネットの環境を整備するべきだ。

 

例2c
 今日の情報化を支えているものにインターネットがある。これにみんなが対応できているのだろうか。
 現状からするとなかなかそうとは言い切れない。
 これからは、老人や子どもでもたやすく使えるインターネットの環境を整備するべきだ。
 今インターネットをやろうとすれば、主にパソコンを使う。そのパソコンでは、パソコン本体の他、ディスプレイ、プリンタ、インターネット接続のための機器、ソフトまでをセットにして、購入後すぐに使えるものが人気を呼んでいる。こういう商品開発をこれからもどんどんしていくべきだろう。
 さらに、販売後のアフターサービスを充実すること、設定項目の少ないソフトを開発していくことなどで、インターネットを誰にとっても今よりももっと身近にしていくことが必要である。

 一応この文章は小論文になっている。これくらいの論の展開が破綻(はたん)なくできれば、七十点の合格ラインぎりぎりというところだろう。(これで、誤字があったり、文のねじれがあったりしたら不合格だ。)
 だがこの文章では、それほどおもしろいと読者は思わないはずだ。それは、筆者の主張の部分が、多くの人が常識としていることからほとんど深まっていないからである。
 小論文とは、物事に対する自分の意見を述べて、相手を説得する文章のことである。だから、主張の部分に「相手を説得」しなければならないような内容がないと、読者はおもしろいとは思わない。そして、そのような内容を持った文章を書くためには、人が当たり前だと考えていないところまで論を深めるか、そこまでできないまでも、みんなが正確に整理しきれていないところまできっちり整理して示すか、あるいは、その当たり前なことを極めて印象的に読者にイメージさせるか、そのいずれかをしなければならない。

読むべき内容がある文章とは

  • 人が当たり前だと考えていないところまで論を深める。
  • みんなが正確に整理しきれていないところまできっちり整理して示す。
  • 当たり前なことでも極めて印象的に読者にイメージさせる。

               下になるほど印象度は低い。

 このような説明を読んでも、さっぱり具体的にどうしたらよいか見当がつかない人は、次のような作業をしてみよう。
 まず、賛成の人も反対の人もいるような、世間で問題になっている事柄を一つテーマとして取り上げる。次に、賛成か反対か、自分の立場を決める。そして自分の考えに賛成の理由を一生懸命に考え、一方で、反対の人の意見が駄目な理由を一生懸命考える。最後に文章がつながるように以上考えたことをつなぎ合わせる。
 こうすれば、もともとみんなが様々に意見を持つような奥深いテーマだから、最初から最後まである程度話のつながりの分かる人が納得する文章を書けば、自然と「みんなが正確に整理しきれていないところまできっちり整理して示」したことになるはずだ。
 話を元に戻そう。この例文の場合には、みんな「インターネットを使いやすくするべきだ。」と思っているのだから、右の説明のように議論を整理するだけでは、「読むべき内容がある文章」にはならない。だから、なかなかこれ以上つきつめて書くのは難しいのである。
 だが、ここまでこの例文の推敲に付き合ってきた君たちに、テーマの選び方が悪かったでは納得がいかないだろう。このテーマであえて「相手を説得する内容」を求めていこうとすれば、次の(例二d)の文章ぐらいは書けるだろう。
 また、例二のこれまでの例文では、私は我慢して「これにみんなが対応できているのだろうか。」という問題提起の部分を残してきた。しかし、このような誰もが同じ答えしかしないような問いかけは、するだけ無駄で、取り立てて言うほどもないことに対して、とてつもなく大仰(おうぎょう)な物言いになってしまうだけだということに、君たちは早く気がついてほしい。(p65参照
 この例文のような場合は、「みんなが対応できているわけではない」と、さっさと言ってしまうのがよろしい。

例2d
 今日の情報化を支えているものにインターネットがある。だが、これにみんなが対応できているわけではない。これからは、老人や子どもでもたやすく使えるインターネットの環境を整備するべきだ。
 今インターネットをやろうとすれば、主にパソコンを使う。そのパソコンでは、パソコン本体の他、ディスプレイ、プリンタ、インターネット接続のための機器、ソフトまでをセットにして、購入後すぐに使えるものが人気を呼んでいる。こういう商品開発をこれからもどんどんしていくべきだろう。
 さらに、販売後のアフターサービスを充実すること、設定項目の少ないソフトを開発していくことなどで、インターネットを誰にとっても今よりももっと身近にしていくことが必要である。
 しかし、これでもテレビなどを買ってきてアンテナと電源をつないですぐに見るというようなわけにはいかない。だから、たとえばiモードのように、インターネットの一部の機能の利用だけに絞って、それを使いやすくした商品もこれからどんどん開発していくべきであると思う

 これでもまだ論の深まりには欠けるが、最終段落では少なくとも誰もが当然と思う内容に留(とど)まっていない点で、「おもしろみ」「書くべき内容」がある。これで七十五点くらいだ。
 だがこの例を見れば、最後の段落のような発想はかなり難しいことが分かるだろう。このようなみんなが同じ方向から考えがちなテーマを選ぶ場合には、論点の整理だけでは読むべき内容を作り出せないから、どこかで非凡(ひぼん)な発想をしなければ、読んで面白いと思わせるような文章にはならないのである。

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