1 部活動

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1 部活動

  (添削記号については、「凡例」参照のこと)

  スペシャルな音楽はスペシャルな人間から

(×いらない)
 私の高校生活を振り返ってみると、たくさんの思い出でいっぱいだ。中でも一番(×1番)はっきり思い出すことはやはり部活動(×部活)のことだ。まだ引退してもいな いが、卒業してもこのことだけはいつまでも心に残り続けるだろう。

 私は中学校の頃から吹奏楽部に所属し、フルートを吹いている。はっきりいって中学の時は、うまいと有名な部(×学校もうまいと有名)ではなかったし、私自身レッスンに通っていることに満足し、部活動に積極的ではなかった。しかし、O商業高校吹奏楽部のステージやマーチングを見て、とても感動したことで、私の音楽や楽器や部活動に対する気持ちが大きく動いたのだった。そして今、私は音楽を人に評価されたいというようなそんなレベルの話ではなく、聞いてくれた人みんなに、感動して涙を流してもらえるような演奏をしたいと思う。
 高校生になって、いろんな学校や、プロの方と接することがとても増えた。そして、その行動や姿などを見て、感動的な演奏をする団体と、そうではない団体との違いが分かった。それは私の今まで覚えてきた言葉では(×じゃ)説明しきれそうもないが、顧問の(×石原)先生の言葉では、「スペシャルな音楽はスペシャルな人間から」である。これはそれほど(×とても)簡単なことではない。私たちは今のままでは何年経ってもスペシャルにはなれない。どんなに自分を甘やかしているかはっきり分かる。自分に厳しくなれない精神的な弱さに勝つこと、それが私たちの目標だ。
 最近、見習うべき団体と一緒に行動する機会があった。合奏した後すぐ、私たちは移動で早く動こうとしていた。だがその時(×が)、その団体の中の一人が、みんなが落とした唾を拭いていたのだ(×なし)。私たちから見るとすばらしい(×すごい)ことだが、その人からすれば、何でもないことなのだろう。それをしたということではなくて、「気がついたから自然と行動に出たのだろう」と思うと、私たちはとても恥ずかしかった。同じ高校生なのにこうも違うとは。
 最近私たちはだんだんそのことを理解してきた。しかし、そこまでのことを理解している団体は、他にもたくさんある(×いる)だろう。その後が大切だ。できる団体、できない団体。その差はとても大きい。私たちは自己満足で音楽をやっているのではない(×んじゃない)。人の心を動かすほどの音楽は自分たちが楽しんでいてはできない。私たちは努力をして、音楽を通じて私たちの伝えたいことを伝えたい。そのために、自分のやりたいことやりたくないことという基準で区別せずに頑張っていこうと思う。そして卒業してもそういう気持ちでいたい。

 「唾を拭くのに感心した。」というレベルの話では、よく聞かされるお題目(だいもく)にすぎない。この文章では、部活動をする中で作者が考えた具体的な内容が裏付けとなっているため、作者の「吹奏楽に取り組む真摯(しんし)な姿勢」がひしひしと伝わってくるのだということを感じ取ってほしい。

 また、「同じ高校生なのにこうも違うとは。」というような言い方には注意する。こういう言い方は思わせぶりな表現になることが多い。ここではさほど違和感を抱かせるほどでもないが、それでもやはりここの表現だけがなんとなく浮いている感じがするはずだ。君たちは、文章を途中で言いさしの形にしないということを習慣にしよう(p3 9参照)。

※不必要なものを省く

 添削例で、「石原先生」を名前のない「先生」と直してあるのを不審(ふしん)に思った人もいるだろう。
 文章において、先生であることだけではなく、どの先生であるかが重要な場合は、当然名前を省くことはできない。しかしこの文章の場合は、極端な言い方をすれば、読み手にとって先生が誰であってもあまり関係がない。こういう場合は、先生の名前を省いて読者に余計な気を使わせないようにする。
 このように、自分の言いたいことにとって

あまり重要ではないことを省略して、読者に余計な気を使わせないようにする

ことも、論旨を明快にする上で重要なことだ。
 たとえば、君たちに「私の高校生活」というような題で作文を書いてもらうと、この文章のように、「私の高校生活を振り返ってみると、たくさんの思い出でいっぱいだ。」というようなことを最初に書きたがる。だがこのような

みんなが書きたがるような意味のない前置きは省き、最初から本題に入る

とすっきりしたいい文章になる。
 次の〈二、皆勤〉の書き始めについても同じことがいえる。(参照p49

※字数稼ぎは通用しない

 右のことを別の観点から説明すると、「字数稼ぎに書いたもの」は、書いたこと自体の内容のなさだけではなく、文章の論旨をぼかすことにもなるため、百害あって一利なしということだ。

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