いわゆる小論文について

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大学入試のいわゆる小論文について

今日では多くの学校で小論文入試が取り入れられ、試験の形態が多様化している。そこで、小論文として出題される問題の諸形態について説明しておこう。

  1.  作文(これについては既に解説した。四年制大学ではこの形式の出題は少ない。)
  2.  課題文の要旨を問うもの。次の3、4の形式と平行して出題されるが、これはいわゆる現代文の問題である。
  3.  課題文のある部分の意味を問うもの。2、4の問題と平行して出題される。これも現代文の問題。
  4.  昔ながらの小論文。与えられたテーマにそって自由に
    自分の論を展開するもの。課題文が与えられることが多い。
  5.  右の2から4のバリエーションとして、課題文が英文で与えられるもの。英語の問題が組み合わされて出題されることもあるが、基本的には2から4の問題文が英語になっただけであるから、対策は2から4と同じでよい。それに英語の長文読解の勉強を組み合わせる。
  6.  国語以外の各教科の論述問題と同質のもの。これは、それぞれの教科の論述問題用の対策を立てる。

 以下、この本でいうところの「現代文の問題」「小論文の問題」という区別を説明することで、小論文に対する基本的な考え方について述べておく。
 国語という教科が扱う分野は幅広いが、そのうち限られた答えを正解とするいわゆるテストという形式で問うことができるのは、漢字や文学史などの知識のほか、筆者の述べる主張、またはそこに描かれている情景などを正確に読み取るということだけである。そこで、この狭義の読解以外の分野、すなわち、読み取ったものをいかに鑑賞するか、いかに己の思考に生かすかといった分野など、限られた答えを正解とすることが不可能なものをとりあえず置いておいて、客観的に評価しやすい読解力や知識だけを試そうとするのが、筆者のいうところの「現代文の問題」だ。
 だから、「現代文の問題」では、「何を答えても正解だ。」などということは、本来絶対にあってはならない。
 だが、いくら問題に客観性を持たせるためには問題にしにくいとはいっても、読み取ったもの、学んだことを元に、自分の考えを作ったり、それをきっちりと人に伝えたりするということが、学問・研究をしていく上での不可欠な能力であることには変わりがない。
 そこで、予定された答えを正解とする、現代文や他教科の試験とは別に、この能力を試すために工夫されたのがいわゆる「小論文入試」だ。だからこの小論文入試では、教えられたものの丸暗記、筆者の主張のコピーなどでは全く意味をなさない。
 この要求された答えが全く異なる、「現代文」の問題、「小論文」の問題といった区別、これを君たちはしっかりとつけておいてほしい。「現代文」の試験では、常に与えられた問題文の中に根拠を求めて解答するように努め、自分の意見を絶対に混じり込ませないようにしなければならないし、また逆に「小論文」の場合は、作者の意見を解説したりまとめたしても、そのこと自体は全く得点に結びつかない。むしろそれどころか、これが多すぎると、本来自分の意見を述べなければならない所まであら筋で埋めてしまうことになるわけだから、減点の対象になってしまう。筆者の意見のまとめなどは、自分の意見を述べるための最小限度にとどめて、最大限自分の意見を述べるスペースを確保しよう。
 ここでは、何を論文の対象として取り上げ、どのような考察を自分の意見として展開するかということが問われているのだから、自分の意見を堂々と主張するように心がけることが大切である。

※何について論じるか……あくまで読解が前提

 ただし「何について論じるか」については、ある程度注意しておかなければならないことがある。大学入試の大半を占める課題文を先に読ませて論文を書かせる形式のものでは、

主題を課題文が問題にしている焦点にあわせる

必要がある。いくら自由に書いていいといっても、課題文に枝葉としてしか扱われていないようなことに対して得意げにとうとうと反論を述べたてても、「何を書いてるの。」といった印象を与えるだけだろう。君たちの論文の中にはこういうものが驚くほど多い。実際には、論文を書く前段階に、前提としての読解力が要求されているのだということを肝に銘じておこう。

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