作文・小論文とは

作文・小論文で問われること
「作文」「小論文」という名の試験では、君たちのどういう能力が試されるのだろうか。
まず最初に考えつくのは、働く・あるいは学ぶ姿勢、生きていく上での積極的な態度など、回答者の人間性を見ようとするものだろうか。たとえば就職試験で課される作文、一部の短大・芸術大学などで課される小論文など、この類のものをこの本では「作文」と名づけることにしよう。
しかし、同じ作文・小論文とはいっても、出題意図のもっと違ったものの方が四年制大学の入試などでは圧倒的に多い。この本で「小論文」と呼ぶことにするこの類の問題では、与えられた課題について、解答者がどれだけ深いところまで考えることができるか、または考えているかということ(問題意識)、自分の考えをどれだけ客観的に、かつ論理的に組み立てることができるかということ(論理的思考能力)、そして考えをいかにまとめて表現することができるかということ(言語能力)を試そうとする。そうすることで、大学で学ぶに足る資質を君たちが備えているかどうかを見ようとするのである。
だからこの手の出題に対しては、与えられたテーマ、たとえば「豊かさとは」とか「今後の日本のあるべき姿とは」とかについて、自分の意見をはっきりと、論理的に筋道を立てて主張しようという意識を持つことが大切である。君たちは、「小さくてもれっきとした論文を書くのだ。」という気持ちになって、これらの問題に取り組んでほしい。
もちろん、以上の作文と小論文とではある程度重なる部分もある。だが、出題される目的が違えば求められる文章も違ってくるのだから、自己満足にしかならない見当違いな答案を作らないために、その根本の違いをしっかりと頭に入れておいた方がよい。
たとえば作文では、あまりに理屈っぽい文章は、理屈をこねる人間を連想させてしまうため嫌われるだろうし、小論文では、感性のよさを感じさせる情感豊かな文章を書いたつもりでも、採点官の目にはむしろその非論理的な部分の方が気になるに違いない。
君たちは、進路希望先で出題されるものが、果たして「作文」なのか「小論文」なのか、その出題意図を考え、それにあった答案を作成するように心がけよう。
- 作文・・・・・・人間性をみる。
- 小論文・・・・問題意識・論理的思考能力・言語能力をみる。
※「作文」「小論文」という呼び方に注意
ここで私が使った「作文」「小論文」という言葉は、大学の募集要項に書いてある受験科目名とは必ずしも一致しない。募集要項に小論文と書いてあっても、課題が「私の高校生活」とか「私の読書」とかであれば、この本の立場からいえば作文の課題である。(本書では今後も、作文・小論文について右のような呼び分けをする。)
君たちは募集要項での呼び方に惑わされることなく、志望先の既出の問題を調べて、作文なり、小論文なりが課される意図を考えておいてほしい。