文章を書くということ
文章を書くということ
分かっていると思っていることをいざ文章にしようとして、はたと困るという経験をしたことはないだろうか。そういう経験をした時、「自分は文章が苦手だから」とつい思ってしまう。だが、文章にならない根本の原因は、実はもっと別なところにある。
我々の頭の中は、似通った、関係がありそうなことを厳密には関係づけないで、つながっているつもりになっていることがとても多い(p34参照)。そのため、かなり筋道を立てて考えていると自分では思っていることでも、その考えの構成要素同士の関係が本当は曖昧である場合が非常に多いのだ。そういう分かり方の時、「分かっているのに書けない」と自分ではそう思ってしまう。しかしそれはやはり思いこみにすぎないので、本当のところは、実際に文章に書けるほど厳密には分かっていなかったというだけの話だ。
一般に文章を書くとは、よく分かっている内容を、文章という形にするのだと思われている。しかし本当は、このように分かっているつもりになっている内容を、さらに整理して、文章という形にできるほどまでに明確に位置づけるという作業をして初めて、第四章で説明するような、文章を構成する要素が関連づけられて、破綻なく結論まで導かれている文章ができるのである。
確かに文章を書くのは苦しい。なにからどう書き出していいか分からない。だが、この苦しみは産みの苦しみなのである。この苦しみを乗り越えることで、君たちは初めて厳密に考える方法を身に付けることができるのであるから、くじけずに何度でも挑戦することが大切である。
文章を書くとは
頭の中でまだあやふやにしか分かっていないものを、文章という形にできるほどまでに明確に位置づけること。